2012年8月13日月曜日

肩関節周囲炎における寝返りの打ち方

寝返り1つとっても患者さんにアドバイスできることがあります。

肩関節周囲炎の患者さんで夜間痛がある方で、「夜に患側が下になっていて痛くて目覚めた」ということを良く聞きます。

「夜間痛とは」


一般に夜間痛とは以下の2つによって生じるとされています。
  1. 肩峰下圧の上昇
  2. 上腕骨圧の上昇

夜間痛を起こす患者さんは多くが、肩関節上方支持組織にストレスをかけないように、肩甲骨下方回旋(肩を下方に下げる)、肩関節軽度外転位(肩甲骨が下向きなので、腕がそのまま下に垂らしていても、肩関節は相対的に腕を上げたようになる)であるのです。
これはいわゆる疼痛緩和肢位といえるでしょう。

しかし、背臥位(仰向け)になると肩甲骨が前外方に30°傾いている(腕は前で作業しやすいように身体の真横ではなくやや前方についている)ので、仰向けになると肩と床面の間にすき間ができます。
健常な肩関節であれば、肩関節伸展・外旋(腕を後に引き、掌を前に向ける)でこのすき間を埋めることができますが、先ほども述べたように、肩関節上方支持組織にストレスがかかることにより痛みが生じる患者さんにとっては、この「肩関節伸展・外旋」という動きは痛みにつながりやすいのです。

「肩関節周囲炎における寝返り」


そんなこんなで痛いのを我慢し、なんとか眠りに付いたとしましょう。
しかし、ここでもう1つの乗り越えないといけない壁があります。
それは寝返りです。

ヒトの身体は長時間同じ場所を圧迫されると、そこの部分が血行不良となる(指を強く押すと白くなるのと同じ)ため、睡眠時もそれを避けるために寝返りを打ちます。

このときに、通常は背臥位(仰向け)から側臥位(横向き)に変えるのですが、その時に患側を下にすると痛みが増強するのです。

ではこれを患者さんに何と説明しますか?
「痛い肩を下にしないように寝てくださいね」と言えばあとは患者さんが工夫してくれでは、愛が足りません。

ここでは自論としてもう一歩話を進めてみたいと思います。

「肩甲骨の内・外転」


まず、先ほど挙げた夜間痛の原因のもう2つ目が、上腕骨圧の上昇であったと思います。
これは上腕骨の後面の後上腕回旋静脈の圧迫が原因(運動疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学より)とされています。
わかりやすく言うと、肩の後ろを圧迫すると骨に血を送り込む動脈は正常だが、骨から血が出ていく静脈は圧迫されてしまうのです。
その結果として、上腕骨という骨の中がパンパンになり、ズキズキ痛むのです。

自分の臨床での経験より、肩関節周囲炎の患者さんは、肩関節の動きだけでなく肩甲骨の動きも悪いです。
この患者さんが、横向きで寝たときに方はどうなっているでしょうか?

肩甲骨がしっかり外転(肩を前に突き出す)していれば、肩甲骨の後面で身体を支えることとなります。
しかし、肩甲骨の外転が不十分だと、肩関節で身体を支えることとなります。
つまり、肩の後面に圧迫がかかっているのです。

しかも、肩甲骨は上方回旋(肩が上に持ちあがる)して、先ほどの肩関節上方支持組織にストレスがかかることとなります。(肩を下げているのが楽な姿勢なのに、肩を無理に上に持ち上げられるとから痛いのです)

つまり、肩甲骨の内・外転が寝返りを打つのに重要なのではないかと推測しています。

まだ、臨床で裏付けをとっておらず、推論なのですが、前々からぼんやりと考えていたことと、運動疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学という本を読んだ時のひらめきがきっかけで、これを書くこととなりました。

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