2011年4月29日金曜日

保存療法の可能性

以前まではただの独り言のような気分で書いていたのですが、
最近は少しずつですがアクセスしていただける方々が増えてきているようで、感謝してます。

さて、肘関節拘縮について追加情報です。
以前より紹介している肘頭骨折の患者さん(「肘関節骨折後の拘縮」という記事参照)についてです。

転院してきた時点で屈曲110°、伸展30°。現在、術後2ヶ月ほど経過しますが肘関節屈曲135°、伸展20°くらいです。
それほど、強度のリハビリは行っておらず当院にて1ヶ月ほど経過します。
現時点での問題点は、以下の通りです。
①手術が肘関節後方より行われたため肘関節後面に皮膚拘縮がある
②患者は自宅にて患側を使用しないため筋力萎縮が目立つ

①についてですが、やはり『関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション―上肢』のP123の図9bのように記載があるように、皮膚を集めてくるようにしROM訓練を行っています。
②については、P123の図9aの様に柔軟性の獲得を行っています。

やはり、観血手術を行うと術後の関節可動域は良いです。
しかし反面、皮膚の拘縮は目立ちます。
今回紹介した患者さんは80歳男性ですので、その点は気にしてませんでしたが、これが女性となるととても勧められない気がします。

その場合の選択肢としては、やはり柔整師の得意とする保存療法です。
ただし、肘関節拘縮が必発です。当院では伸展位のまま4週間固定、その後入浴時以外は固定が1週間ほど行います。
それでも、予後が良くても半年のリハビリ期間が必要で、満足のいく可動域が出ているのが同様の症例を含め直近4例のうち2例です。
当院の治療技術が足らない部分もあるのでしょうが、かなり難しいリハビリであります。
要するに、傷は残らないが可動域制限が出現しやすいのです。

しかし、ここの可動域制限を出さない、そして制限を出しても後療法を工夫することで観血手術にも劣らない成果を残せるのでないかと考えます。

そこで他院での治療を参考に、当院の保存療法をどのように工夫していけばいいか少し考えてみたいと思います。

当院の上記症例中2例は2cm以上の肘頭離開でした。その点が、1cm以内を保存療法の適用としている下記書籍とは異なることを考慮に入れて読み進めてください。

参考書籍1 『柔道整復学 実技編』
固定方法:当院とほぼ同様の固定法
固定期間:2w以降は肘頭部の絆創膏除去、3~4w経過時より肘関節屈曲角度を徐々に増加させる、5~6w副子除去
後療法:肘関節屈伸運動は6w以降から

参考書籍2 『関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション―上肢』 P126
≪保存療法例≫
固定方法:詳細不明
固定期間:受傷後5日~7wギプス固定(肢位不明)、~8wシーネ固定、8w~三角巾固定
後療法:浮腫除去、上腕筋・上腕三頭筋・内側側副靭帯などに個別アプローチ、持続伸張装具の使用
⇒結果、7ヶ月後に屈曲135°、伸展0°となる

1つ目と比較すると、固定で参考になる。
固定完全除去前に固定角度を徐々に良肢位に変えていくというのは、柔整師にとっては当たり前だが当院では行っていない。ただ、私の経験からすると屈伸が6w以降は長いのではと感じる。骨折が強い症例でも4wほどで軽度の自動運動なら可能である。
2つ目と比較すると、後療法で参考になる。
詳細は本書を当たってほしいが、解剖をしっかりと理解して治療することの大切さを痛感する。だって、固定期間が長いのにしっかりと成果を挙げている。

ちなみに、肘関節の参考可動域は145-5°です。

話が長くなりましたが、言いたいことをまとめると以下の通り。

「観血療法は可動域は出やすいが傷が残る」
「保存療法は傷は残らないが可動域は出にくい」
「柔整師は保存療法の固定方法・期間を工夫する余地がある」
「柔整師は後療法も工夫する余地がある」



柔整師の数が増えて、整形外科医も増えています。また、街中の整形外科にも理学療法士が働くことが増えてきています。自然と柔整師のパイが狭くなっています。この業界にとどまるには、今のままではいけません。
「柔整師の強みは何だろうか」ということを考えて業界全体が力強くなっていかなくてはいけないと思います。

その一歩が私たち一人一人の精進であると考えます。

今後もたくさんの本を読みながらお勧めを書いていきたいと思います。
参考になったという方は、以下のリンクよりお買い求め下さい。


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